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「体験」がポイント!富裕層向けのインバウンド対策4つ

新型コロナウイルスの感染拡大が世界各地で生じている現在、いずれの国も観光業をはじめ多くの業界に多大なダメージを受けています。しかし一方で、コロナ終息後は海外旅行を計画したいと考える層もあり、将来的な需要回復が期待できる状態です。

日本国内も、今後は将来の需要を視野に入れたインバウンド対策が求められます。特に注目すべき点は、メインターゲットを富裕層へ絞ることです。

ここでは、根拠となる観光庁の「上質なインバウンド観光サービス創出に向けた観光戦略検討委員会」[1]での議論について解説します。

富裕層のインバウンド対策が今注目されているのはなぜ?

富裕層の外国人観光客は、全体の1.0%に過ぎません。その多くが中国と欧米豪5か国で、特徴的なのは彼らの消費額です。

たしかにインバウンド全体との比較はごくわずかの人数ですが、消費額で見ると全体の11.5%と大きな割合を占めます。インバウンド対策を考えるうえで、単純に「旅行者数が少ないから」といって切り捨てるには惜しい層と言えます。

さらに今後は、新型コロナウイルスの影響による需要の変化も視野に入れなくてはなりません。コロナの影響により運営企業問わず航空便が減少した現在、当面は旅行代金の高騰が引き起こされるでしょう。

結果的に富裕層の旅行需要回復は見込める一方で、そのほかの一般層の旅行需要は早期の回復を期待することは困難です。そのためコロナ終息後のインバウンド対策では、富裕層を取り込む施策ができているかどうかで明暗は分かれると考えられます。

富裕層の志向と消費性向からみる旅行ニーズの違い

富裕層をメインターゲットとする場合、従来のインバウンド対策では通用しない可能性がある点に注意しましょう。

以前から一般層を想定した対策を行ってきた企業や店舗は、まず富裕層の志向と消費性向を把握することが重要です。彼らは旅行に何を求めているのか、どのように旅先で過ごすのかを理解したうえで取り入れる施策を厳選しなくてはなりません。

富裕層の志向

旅行雑誌やサイトのほかに、SNSや友人知人からの口コミ情報を参考に旅行計画を立てるのが現代の一般的な外国人観光客の行動です。富裕層も同様で、とくに訪日旅行経験のある友人知人や家族の話がプランに強く影響します。

富裕層の志向は、大きく分けて「Classic Luxury」と「Modern Luxury」の2タイプです。従来型とも言える「Classic Luxury」に対して新型と呼ばれる「Modern Luxury」が、近年は拡大傾向を見せています。

それぞれの特徴は、次のとおりです。

Classic Luxury

「Classic Luxury」型は、50~60代が中心となった層です。他者や世間による評価や慣れ親しんでいる事象に重きを置くタイプで、富や権力、地位など従来の富裕層に見られる価値観が主流となっています。

そのため旅行では以下の点を重視します。

・快適性の高さ
・サービスの質の高さ
・ステータスシンボルとなるもの
・エクスクルーシブ(排他的)な環境
・プライバシーが守られるもの

たとえばハイクラスの宿泊施設やプライベートビーチ、利用・所有自体がステータスとなるものなどを好む傾向です。

Modern Luxury

上記のタイプに対し、対極的な特徴をもつのが「Modern Luxury」型です。20~30代が中心となった、文化や起源、独自性などを好む多様性に富んだ贅沢さです。

求められる傾向として、以下のものがあげられます。

・本物の体験
・一生に一度の体験
・ボランツーリズム(ボランティアと旅行のミックス)
・エコツーリズム(自然環境や歴史文化を尊重する)
・サステイナビリティ

高級なものであれば良いという考えではなく、あくまで自分にとって価値があるかどうかで判断することが大きな特徴です。

たとえばClassic Luxury型の場合はステータスとなる高級プランを好むのに対し、Modern Luxury型は興味がない限りは必要以上にお金をかけようとはしません。代わりに興味を持ったものに対しては金銭を惜しまず投入します。

富裕層の消費性向

消費性向も、志向と同じく多様化しています。従来型の消費傾向を見せる層が存在する一方で、現代ならではの志向もあり、インバウンド対策を進めるうえで両方の視点を考慮しなければなりません。

消費性向も、「All Luxury」と「Selective Luxury」の2種に分けることができます。それぞれの特徴は、次のとおりです。

All Luxury

その名のとおり、旅行のすべての費目にお金をかける性向です。お金をかけて相応の休息とリラクゼーションを得ることを目的としている旅行者が大半で、人によっては富裕層向けのパッケージプランを利用する場合もあります。

一般的な旅行者の中には「交通費を抑えて、高級ホテルに泊まる」など一部の費目を重視する人もいますが、All Luxury型の富裕層の場合はすべてを重視します。

たとえば飛行機や宿泊施設はハイクラスを選び、プライベートガイドをつけるなどです。同様にハイクラスのエステなど現地サービスを楽しみ、ショッピングも高級志向の商品を選びます。

Selective Luxury

「Selective Luxury」型は、必ずしもお金をかけた旅行をするとは限らない層です。優先度の高いものにお金をかけることはありますが、All Luxuryのようにすべての商品やサービスをハイクラスで揃えようとは考えません。

たとえば、宿泊施設のランクにこだわらない代わりに航空機やプライベートガイドに費用を割くなど、必要に応じたお金の使い方をします。

若年層やアーリーリタイア層を中心とした、体験型旅行や周遊旅行を好む傾向が特徴です。そのため目的によっては、最低限の設備のみの場所を利用したり宿泊したりすることもあります。

富裕層が喜ぶ!おすすめのインバウンド対策4選

前述の志向や消費性向から分かるように、富裕層がターゲットだからといって必ずしも価格が高ければ喜ばれるとは限りません。高級食品や高級な施設であっても、本人が必要性を感じなければ他社のロークラス商品を選ぶ可能性があります。

近年の傾向を踏まえたうえで、現代の富裕層に通じるアプローチ方法が必要です。最後に富裕層の外国人観光客が喜ぶ、4つのインバウンド対策を紹介します。

1.コンテンツの充実

体験型サービスなど、いわゆる「コト消費」の需要が高まっているため、提供するコンテンツの充実が求められます。日本のその地域にしかないものをアピールしましょう。

たとえば以下の体験があげられます。

・そこでしか食べられない食材・料理(郷土料理など)
・そこでしか見られないもの(伝統工芸品や文化など)
・そこでしか体験できないもの(雪国のスキーなど)

同様のものが他地域に存在する場合は、違いを明確にアピールすることで地域独自の魅力として感じてもらえます。

2.受け入れ体制の強化

受け入れ体制の強化も重要です。大衆店の雰囲気やサービスを好む人もいますが、プライベートな空間やサービスを喜ぶ層もいます。

人員やコストに余裕があれば、以下のような対応を検討してはいかがでしょうか。

・貸し切り利用への対応
・時間外利用への対応
・多様な食事制限に配慮(ヴィーガンやハラルなど)

日本では馴染みの薄い宗教的な事情や思想による食事の制限など、需要の多様化を視野に入れたサービスが必要です。

3.より価値のある体験の提供

一般向けのガイドやボランティアガイドの提供だけではなく、プロや専門家による指導など、より価値のある体験を提供する方法もおすすめです。

ほかにも通常は立ち入れない場所の見学など、富裕層向けのプランとして新たに盛り込んではいかがでしょうか。特別感の演出は話題性も期待できます。

4. 宿泊施設の整備

地方の場合、宿泊施設の整備も課題のひとつです。東京・大阪・京都など都市部や人気の観光地は富裕層向けの宿泊施設が数多く存在する一方で、地方には不十分です。

仮に富裕層向けの施設や部屋があったとしても、都市部に比べると外国人観光客への不慣れさから必要なサービスが提供されていないケースもあります。

主要な施設の使い方をまとめたガイドブックの多言語化や、要望に対する柔軟さなど、外国人観光客をターゲットとする以上、日本人相手とは異なるサービスや整備が必要です。

まとめ

新型コロナウイルスの影響により、終息後は当面の間、旅行費用の高騰が予想されます。必然的に、日本を訪れる外国人観光客も、従来と比較して富裕層の割合が増加すると見てよいでしょう。

そのため今後は富裕層をメインターゲットとしたインバウンド対策が必要です。ただし、すべての富裕層が高級志向とは限らず、お金をかける場所・かけない場所を分けている層も存在することを理解しておかなくてはなりません。

高級性ではなく、あくまでお金をかける価値のある希少性や体験内容を提供することが重要です。

▼出典
1.観光庁 「上質なインバウンド観光サービス創出に向けた観光戦略検討委員会」
https://www.mlit.go.jp/kankocho/joushitsukanko_kentoukai.html

 

 

(上記掲載の内容は、掲載日時点のものです。あらかじめご了承ください。)