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日本で外国人が就労ビザを取得するのが難しい理由

外国人労働者を求める社会の流れがある一方、雇い入れには多くの手続きや規則の壁が立ちはだかっています。そのため、外国人の中には「せっかく日本に来たのに、希望する職種や業務に就くことができない」と悩むケースも少なくありません。

経営者側も安定した雇用が望めず、思うように外国人労働者を雇い入れられていない状況です。

需要があるにもかかわらず、なぜこのような問題が起こっているのでしょうか。今回はその理由について、詳しく解説します。

就労ビザとは

外国人が日本に滞在するためには、目的に合った在留資格を得る必要があります。在留資格は複数の種類があり、就労を目的としたものが一般的に「就労ビザ」と呼ばれています

就労ビザは業種などでこまかく分類されており、現在は以下の19種類です。[1]

在留資格 詳細
外交 外国政府の大使・公使・総領事・代表団構成員など(同行の家族含む)
公用 外国政府や国際機関から公の用務で派遣される人物(同行の家族含む)
教授 大学教授など
芸術 作曲家・画家・著述家など(興行の項目に該当しない者)
宗教 外国の宗教団体から派遣される宗教家(宣教師など)
報道 外国の報道機関の記者・カメラマン
行動専門職 専門的かつ高度な能力を持ち、国の発展に寄与することが見込まれる人物
経営・管理 企業等の経営者・管理者
法律・会計業務 弁護士・公認会計士など
医療 医師・歯科医師・看護師
研究 研究者(政府関係機関あるいは私企業にて研究活動を行う者)
教育 中学校・高等学校などの語学教師
技術・人文知識・国際業務 機械工学等の技術者・通訳・デザイナー・私企業の語学教師・マーケティング業務従事者など
企業内転勤 外国の事業所から転勤してきた者
介護 介護福祉士
興行 俳優・歌手・ダンサー・プロスポーツ選手など
技能 特殊な分野において熟練した技能を要する業務に従事する者
特定技能 特定産業分野に属する、知識や経験、熟練した技能を有する者
技能実習 「技能実習生」に該当する者

就労ビザは、ひとりにつき上記19種類の中から1種類のみが取得できます。許可された内容から逸脱する業務を行うことはできません。

それぞれ許可されている在留期間は異なり、申請内容によって活動に制限が設けられることもあります。

就労ビザの取得が難しい理由

就労ビザを取得するためには、各都道府県に設置されている出入国在留管理局(支局・出張所含む)で所定の手続きを行わなくてはなりません。必要書類を提出し、所定の手続きを行った後にビザ発行が適切であるかどうかの審査が行われます

審査される点は、たとえば以下のとおりです。

■申請した就労ビザが業務内容に適しているか
■実際の業務内容と申請した業務内容に相違はないか
■就労内容に関係する学位や職歴等があるか
■給与条件は日本人と同等以上か

申請すれば必ず取得できるとは限らないので、現在でも多くの外国人労働者がビザを得るために苦労しています。

ここからは、日本における就労ビザの取得が難しい理由について、代表的な4つを紹介します。

理由1.実務経験が必要だから

日本人の求人情報には「未経験歓迎」が珍しくありませんが、外国人労働者が就労ビザを得るためには、未経験の場合は困難です。就労ビザの中でもっとも一般的な「技術・人文知識(学歴)・国際業務」の例をあげると、大学など専攻期間を含めても10年以上の実務経験が求められます。

専門的な知識やスキルを有し、実務経験も持っているプロフェッショナルであることが認められなくては、就労ビザは発行されません。

申請時はそれらを証明する書類の提出も必要となるため、趣味等で身に付けたスキルを頼りに就労を希望している方はビザ取得に苦労するでしょう。

たとえば日本文化が好きで独学で日本語を身に付けたものの、日本語専門学校での学習経験はないという外国人もいます。公的に日本語の学習実績を証明する書類も実務経験もないため、日本語を理解していながら就労ビザの取得が困難となるケースです。

理由2.留学生は働く職種が限定されるから

日本に留学生として滞在していた場合、引き続き滞在するために留学ビザから就労ビザに変更することが可能です。ただし、通常の就労ビザを取得する場合と同じく、学習内容や実績に応じた仕事であることが求められます

以下の例のように、留学時に学んだ専門知識を活かせる職種のみ就労ビザの申請および発行が可能です。

■翻訳… 日本語学科を卒業している者
■プログラマー… 専門学校や学科でプログラミングを学んだ者
■経理… 経理について学んだもの

大学卒業者の場合、重視されないこともありますが、専門学校を卒業した場合は学んだ内容と業務の関連性が就労ビザ取得に大きく影響します。学校や学科によっては就職できる場所が限られるため、卒業時の留学ビザからの変更がスムーズに行えない場合があります。

理由3.企業の雇用能力を厳しく審査されるから

就労ビザの発行時に審査されるのは、外国人本人のみではありません。就労予定の企業も対象です。

企業に対して行われる審査では、以下の点などが厳しくチェックされます。

■安定性・継続性のある企業・事業か(即座に倒産するおそれはないか)
■日本人従業員と同等以上の給与・報酬か
■適切な勤務場所や事務所が確保されているか
■仕事量は十分に与えられるか

企業が厳しく審査される理由は、不法滞在のリスクを軽減させるためです。仮に入社して間もない企業が倒産してしまうと、外国人労働者は解雇され、自動的に不法滞在者となってしまいます。安定した雇用かどうかあらかじめ審査することにより、不測の事態が引き起こす不法滞在を防止します。

給与・報酬の目安は、月額18万円です。ただし日本人従業員の給与が平均18万円以下の場合は、例外が認められます。(証明が必要です)

理由4.企業が求める外国人材のハードルが高いから

就労ビザは、日本国内の企業と雇用契約を結んでいることが申請要件のひとつです。そのため企業の採用内定をもらう必要がありますが、外国人労働者にとって大きな難関となっています。

特にハードルとなっている点が、業務に関連するスキル以前に日本語能力を重視されるケースが多いことです。外国人労働者を積極的に採用している企業も存在しますが、多くは「日本語能力検定」のN1もしくはN2のレベルを求めています。

■N1… 幅広い場面で使用される日本語の読み書き・会話ができる
■N2… 日常的な日本語の使用に加えより幅広い場面でも理解できる

話の流れや表現意図を理解できる能力はもちろん、ときには抽象的な表現も理解できることがN1~N2認定の目安です。

高い専門性に加え、抽象的な表現も含めた日常的な日本語の使用が可能な人材でなければ、企業に採用される可能性は低くなります。結果、内定を得られないため就労ビザの申請や取得が困難となるケースが少なくありません。

外国人が働きやすい環境は整備されつつある

日本の高齢化社会は、同時に労働人口の減少も引き起こしています。働き盛り世代にあたる人口の減少にともない、近年は政府主導で外国人労働者の受け入れが積極的に行われはじめました。

2019年4月には、従来の在留資格に「特定技能」が新たに追加されています。一部の在留資格は1号~3号と細分化されており、特定技能1号は仕事の経験がない初心者でも取得可能です。

これらの働きもあり、2019年の在留外国人数は約293万人と過去最高数へ上りました。今後はより外国人労働者の採用や人材育成が注目される可能性もあります。

まとめ

日本で外国人労働者が働くためには、出入国在留管理局にて所定の手続きを終え、審査に通過したうえで就労ビザを取得しなければなりません。就労ビザはひとりにつき1種類のみとされ、業種や職種などがある程度の範囲まで限定されます。

業務内容に応じた経験やスキル、専門学科等の卒業など実に多くの要件を満たす必要もあるため、多くの外国人労働者は就労ビザの取得自体に苦労している状態です。

国が就労ビザに求める条件に加え、企業が労働者本人に求める能力も高いことがよりハードルを高くしています。今後外国人労働者を積極的に採用するためには、採用条件の見直しや企業によるサポートも重要となるでしょう。

▼出典
1.出入国在留管理庁「在留資格一覧表(令和2年9月現在)」
http://www.immi-moj.go.jp/tetuduki/kanri/qaq5.html

(上記掲載の内容は、掲載日時点のものです。あらかじめご了承ください。)