インバウンド業界に迫られる自粛という選択で見えてくるもの

世界的に猛威を振るっている新型コロナウィルス感染症は、社会生活を大きく変容させましたが、特にインバウンド業界においてはその影響は計り知れません。

社会全体が自粛ムードとなっている今、インバウンド業界も例に漏れず自粛を強いられていますが、この厳しい状況から見えてくるものとは一体なんでしょうか?また、インバウンド業界が取るべき選択とは一体どのようなものがあるでしょうか?

インバウンド業者の自粛状況について解説

社会全体で人の移動を抑え、外出自粛が求められている今、インバウンド事業者の自粛の状況はどのようになっているのでしょう。

自粛方法としての「休業」という選択

アジア圏の春節に伴うインバウンド客増加が始まったと同時期に流れ出した、新型コロナウィルス感染症のニュース。1月の末に中国政府が海外への団体旅行を禁止したことをはじめ、各国からの旅行客も大幅に減少し、2月のインバウンド消費は急激に落ち込みました。

開業していても全く客がやってこないという状況では、売上利益と人件費をはじめとする固定費のバランスが維持できず、休業を余儀なくされているところもあれば、客の来店・滞在による感染リスクを抑えるために休業せざるを得ないというところもあります。いずれにせよ苦しい中での営業自粛の選択を迫られています。

政府が社会全体にリモートワークを呼びかけている今、このニーズに合わせて大胆なプランを提供しているホテルもあるようです。感染症対策を万全にした上で、ホテルの一室で仕事ができるよう、Wi-Fiやプリンター利用、コーヒー飲み放題などのサービスを割安で提供したり、子連れ客には子供料金をサービスしたりするといったプランが登場しました。

部分休業:営業時間の一部を休業している例

ホテルグループの中には、複数あるホテルのうちの一部を休業する対策をとったところもあります。すべてを休業するのではなく営業を続ける施設も残すことで、顧客のニーズも一定程度満たし、休業中のホテルの従業員を営業しているホテルに勤務させるなどの対応ができるようです。

感染症の対策としては、人の移動を減らすことが大きな意味を持つと言われていますが、宿泊業は顧客の「移動」が前提のため、営業している以上リスクを抑えるのは難しいのが実情です。それぞれの企業が難しい判断の中、経営を続けています。

営業縮小期間は、それまで抱えていた経営課題に取り組む期間に

事業者によって事情が異なるため一概には言えませんが、この期間を少しでも実りあるものとするために、これまで抱えていた経営課題に取り組む期間と捉えてみるのはいかがでしょうか。

それぞれの事業規模や状況に応じて、やること、やらないことの整理をしてみましょう。
他の事業者がどのような対策を行っているかを参考にするのも良いでしょうし、互いのサービスの強みを掛け合わせ、協力することで新しいサービスが生まれる可能性もあります。

自粛が始まってから、自宅で過ごす時間を充実させるアイテムやサービスが増え、「巣ごもり需要」という言葉が使われるようになりました。このような流れの中に、インバウンド事業者が参入する商品やサービスのヒントが隠されているかもしれません。

現状改善のためにどのような対策が取れるか

新型コロナウィルス感染症の完全終息までには時間がかかるとも言われていますが、経済活動は徐々に再開していかねばなりません。その時にインバウンド顧客にまた戻ってきてもらうために、できることから手をつけていきましょう。

経済回復後にインバウンド顧客を呼び戻すには?

実際にお客様が来店することができない時期には、広報活動を強化しましょう。自社のウェブメディアやSNSなどを通じて、日本文化の素晴らしさを再発信したり、自社で取り組んでいる感染症対策などを積極的に公開することで、存在感をアピールしたりできます。

この時期、インバウンド業界の落ち込みは容易に予想がつくので、情報発信することで経営の不透明感を打破し、経済回復後に思い出してもらえるような存在になりたいものです。

インバウンド業界にとって希望となるのは、インバウンド向けのSNSなどウェブページ閲覧数は、大幅には減っていないというデータがあるということです。今はどこにも行けなくて家にこもっているが、落ち着いたら旅行したいと情報収集をしている潜在顧客は確かにいます。

そのような顧客にアプローチできるよう、顧客が注目しているポイントを見極めて、自社サービスの改善を図ることができれば理想的です。

設備の改善

この時期にハード面、ソフト面での設備の改善を目指すのも方法のひとつです。
実行しやすいものとしては、Wi-Fiエリアの拡大があります。無料Wi-Fiはロビー限定であれば、各客室まで範囲を広げるなどです。

また、他言語対応を強化するのも良いでしょう。案内板やメニュー表に表示している言語のバリエーションを増やしたり、翻訳機や翻訳アプリなどを導入したりするのも効果の出やすい方法です。

これを機にキャッシュレス対応を進めるべく、決済方法の検討をする時間に充てるのも良いのではないでしょうか。

従来のインバウンド施策に自社の強みをプラスする方法

インバウンド施策を長く行ってきた事業者であっても、さらに成長するために自社の強みをブラッシュアップすることは必要でしょう。

従来抱えていた課題の洗い出しをする

普段は日常業務に忙殺され、気にはなっているが手が回らないという業務もきっとあるはずです。

例えば、細々とした備品の点検、清掃、事業のコンセプトの見直しや従業員への浸透などです。これらは、従業員からも広く意見を募り、これを機に経営者レベルで検討の場に乗せるのが良いのではないでしょうか。

また、ホテルであれば宿泊顧客のレビューを丁寧に確認していくことも大切です。改善が必要だが多忙のあまり後回しにしている点に、顧客は敏感に気づくものです。これらを一つひとつ改善していくことがゆくゆくの高評価につながります。

取り組む優先順位を決める

ただ、先ほども述べたとおり、事業者によって状況は様々ですから、臨機応変に対応することが重要です。完全休業中なのか、短縮営業なのかによってもできることは違ってきます。取り組む優先順位を決めて計画的に進めるようにしましょう。

予算計画を立てる

行動する前に予算計画の立案も必要になります。経営者自身ができることなのか、従業員に指示してやってもらうことか、外注しなければならないことかによって当然予算が変わるため、経済事情と優先順位、また社会情勢を鑑みて、計画的に進めていくことが求められるでしょう。

強みをプラスする方法のまとめ

自社の強みの打ち出し方には様々なアプローチがありますが、中には従来の固定概念を覆す方法を取る事業者もいます。

新型コロナウィルス感染症の患者のうち軽症者を、病院ではなく宿泊施設に滞在させて隔離するという対策が取られています。大阪市ではいち早く民間の宿泊事業者に公募を行い、それに応じた宿泊施設が多数ありました。

こういった行動を取った宿泊施設には賞賛の声があがり、企業イメージアップに繋がっているものでしょう。

しかし、近隣住民などにも配慮が必要であり、どの宿泊施設もが手を挙げるべきとも言えません。顧客に安心感を与えるために、現状でできることは必ずあるはずです。慎重で冷静な判断が必要となってきます。

まとめ

インバウンド業界にとっては先の見えない暗いトンネルに入ってしまったような時期が続いています。業種や事業規模、立地などによって状況が違い、自粛とひとことで言っても実情は事業者によって様々です。

自粛という厳しい時間をできるだけ有効活用し、時期が来た時に心からのおもてなしができるようにしたいものです。自社の強みとは何かを見つめ、それをまだ見ぬ海外のお客様に届ける工夫を重ねていきましょう。

(上記掲載の内容は、掲載日時点のものです。あらかじめご了承ください。)