【業界別】インバウンド施策の基本とは?知りたいコロナ後の需要

(更新日:2020.12.08)

外国人観光客の増加にともない、多くの経営者の頭を悩ませるのがインバウンドの施策です。さまざまなアイデアを試してみたものの、思ったような結果が得られなかったという経験を持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで、今回はインバウンドにおける施策を成功させるポイントについて解説いたします。また、成功した施策の事例についてもお伝えしますので、参考にしてみてください。

インバウンドの施策前に考えるべきこと

インバウンドの施策をやったものの、それが失敗に終わることがあります。
失敗してしまう背景には、ターゲットに刺さる施策ではなかったという点が挙げられます。また、その施策が外国人観光客には魅力的なものではなかったということもあるでしょう。
なので、インバウンドの施策をやる前には、ターゲットと目的を明確にすること、外国人観光客の目線で考えることの2つが求められます。

ターゲットと目的を明確に

インバウンド施策の前には、ターゲットを明確にすることが大切です。ただ単に外国人観光客をターゲットにするというのでは、範囲が広すぎます。

外国人観光客でも、どこの国から来たのか、どんな年齢層かで、日本に来る目的は異なることでしょう。

例えば、日本の電化製品や化粧品を購入するのが目的で来る人達もいれば、日本特有の歴史的建造物を見に来たという人達もいます。また、日本食を楽しみたいという人達もいることでしょう。

訪日観光客一人ひとりの訪問の目的は異なりますから、すべての外国人観光客に訴える施策を行うというのは難しいものです。

なので、ターゲットを明確にして、そのターゲットに刺さる施策をやることが、インバウンドにおける施策を成功させるためには欠かせません。

また、目的を明確にすることも大切です。「外国人観光客の来店を増やす」というのは、目的としては曖昧なので、もう少し踏み込んだ具体性のある目的を定めるようにしましょう。

外国人観光客の目線で考える

「こんなことを行ったら、外国人観光客は喜ぶだろうな」と日本人の目線で考えても、外国人観光客に訴えるようなサービスを提供することはできません。

外国人観光客の目線に立って考える必要があります。そのためには、外国人観光客の声を集めたり、観光庁のデータなどを確認したりして、外国人観光客のニーズについて知ることから始めましょう。

外国人観光客のニーズなどを理解した上で、施策を考え、分析するようにすると、成功する可能性は高くなります。

インバウンドの施策の基本

拡大するインバウンド市場を取り込むためには、まずは外国人観光客にお店の存在を知ってもらわなければなりません。その上で、外国人観光客が利用しやすいお店づくりをすることが求められます。

このことを踏まえた上で行うインバウンドの施策の基本は、以下のとおりです。

情報発信

集客を行うためには、お店の存在を知ってもらうと共に、来店するメリットを感じてもらう必要があります。そのために行うべきなのが、情報発信です。

インバウンド向けに、オンラインでの情報発信を行っていきましょう。多くの外国人観光客は、訪日前にインターネットを使って情報収集を行っています。

なので、Facebook、Instagram、TwitterなどのSNSを使って、お店の情報を発信していくのは効果的です。

SNSのほかにも、動画サイトやWebメディアなどを使うこともできるでしょう。

多言語対応

外国人観光客が日本で一番困るのが、言語が通じないということです。そのため、尋ねたいことがあっても聞くことができませんし、相手の言っていることが理解できないため、得ることができる情報が限られてしまいます。

インバウンド集客を考えているのであれば、多言語対応に取り組むことは欠かせません。

そのためには、お店のスタッフと外国人観光客がコミュニケーションを取れるようにする必要があります。

来店する外国人観光客が話す言語で話せるスタッフを確保できるようであれば、そうすることができるでしょう。もしもそれが難しい場合は、外国人観光客とのコミュニケーションを図るためのツールとして、音声通訳機や通訳アプリといったサービスの導入を検討することができます。

また、案内やメニューなどの多言語化も必要とされます。外国人観光客が、自分の分かる言語で読むことができるようにしておくなら、利用しやすいという印象を与えることができるでしょう。

決済方法

海外の多くの国では、キャッシュレス決済が増えてきているため、日本での現金払いに不便を覚える外国人観光客は少なくありません。

キャッシュレス決済に対応するということは、インバウンドにおける施策の基本といえます。

最近では、スマホ決済が一般化している国々も増えてきており、特に中国では「Alipay」と「Wechat Pay」を利用する人が多いのが実情です。

そのため、そのような決済アプリに対応しているということは、インバウンド集客において大きなアピールポイントとなるでしょう。

ポストコロナのインバウンド施策

2020年春以降は、新型コロナウイルスの流行により、業界問わず新しい生活スタイルにもとづいた営業活動が求められています。

段階的に海外からの流入に対する制限を解除しつつある日本においても、今後はポストコロナを視野に入れたインバウンド施策が必要です。ポストコロナ(Post-colonia)とはコロナ流行後の状態をさすと同時に、コロナウイルスの流行以降に様変わりした「社会の在り方」をさす言葉です。

すなわちインバウンド業界においても、今後はウイルス感染のリスクや防止策を念頭に置いた施策が必要であることを意味しています。

富裕層の旅行需要が回復する見込み

観光庁の調査によると、日本を訪れる富裕層の消費額は全体の11%ほどです。中国人による爆買いが減少傾向にあると目されていましたが、2019年時点でも富裕層の3分の1程度の割合は中国人による消費です。[1]

コロナ禍以降は航空便の減少により、旅行代金全体が高騰すると予測されています。必然的に旅行チケットを購入できる訪日観光客が富裕層に偏ることとなり、今後は富裕層へのアプローチが有効と考えられます。

世界的な富裕層の割合を見ると、北米の36%に次いでアジアは28%です。前述したとおり富裕層の訪日観光客は3分の1程度が中国人であることも含めると、アジアを中心とした富裕層へのアプローチが重要です。

より安全で上質な旅行が求められるように

世界的なパンデミックが生じる以前は、安さ重視の団体旅行も根強い人気がありました。宿泊費や移動費を安く抑える反面、地域の観光産業、商業施設での消費活動に費用を割いており、受け入れ側にとって人数の多さゆえの売り上げを期待できる要因でした。

しかし今後は、安全性を重視した個人旅行が見直されると予測されます。安さ重視から衛生面や安全面重視へ変わり、旅行先も人の少ない地方都市が候補にあげられやすくなるでしょう。もちろん、費用をかける以上は旅行そのものの質も求められます。

ポストコロナ社会では、人の少ないエリアで上質なコンテンツが選ばれるようになります。

業界別インバウンド向け施策【飲食店】

新型コロナウイルスの流行をきっかけに、さまざまな点で従来以上に「質の高さ」や「安全性」、ひいては安心感が求められています。インバウンド向け施策を取り入れる場合も、ポストコロナを視野に入れた内容を持ち込みましょう。

業界別インバウンド向け施策として、この項目では飲食店でのポイントをご紹介します。

メニューの工夫

飲食店において、メニューの多言語対応は欠かせません。今後は地方都市への旅行者増加も考慮し、都市部以外のエリアでもメニューへの工夫が必要です。

メニューで取り入れられる工夫は、たとえば以下の方法があげられます。

・多言語表記メニューの作成
・メニューへの写真掲載
・指差し会話シートの常備
・タブレット端末での注文・翻訳

最低限、英語や中国語(地域によっては韓国語も)による表記は取り入れておきたいところです。また、言語が通じにくい場合でも味の想像ができるよう、料理の写真をふんだんに使用したメニューを用意しましょう。

注文時や会計時に使用できるよう、指差し会話シートの取り入れもおすすめです。地方自治体によっては無料ダウンロードできるものを配布していることがあります。

その他、手軽に多言語対応できるうえ金額確認もできるタブレット端末も人気です。注文できる機能つきのものをテーブルへ設置しておくと、言語の壁で戸惑うことなく注文してもらえるでしょう。

野菜を中心としたメニュー

コロナ禍をきっかけに、健康そのものに対する概念が変わりつつあります。より健康的な食事への関心が高まっていることから、飲食店側も以下のような対応がひとつのアピールポイントとして期待できるでしょう。

・ベジタリアンやヴィーガン向けのメニュー
・宗教上の食事制限に配慮したメニュー
・代用食材やメニューの提供

店舗全体のコンセプトとして取り入れるほか、新メニューとして加える方法もおすすめです。コース料理など対応が困難な場合は、個別で代用食材を使用したり別メニューと交換したりと一部のみ取り換える対応はいかがでしょうか。

業界別インバウンド向け施策【小売店】

小売店はスタッフ数の都合もあり、一人の顧客に対して長時間対応することが困難な場合もあります。また、一人でゆっくりと商品を吟味したいと考える観光客も少なくないため、かれらが個人のペースで問題なくショッピングを楽しめるような工夫が必要です。

旅行の限られた時間の中で、商品の特徴を正しく理解してスムーズに購入できるようサポートしましょう。

商品説明の工夫

見ただけで大まかな情報を入手できるディスプレイを心がけましょう。たとえば商品をカテゴリーごとに分け、カテゴリー名のみを多言語表記する方法は、手軽で店内の雰囲気も壊しません。

一見するとお菓子のように見える化粧品など、日本独自のデザインが魅力のアイテムは、商品の使い方も丁寧な解説が求められます。カテゴリー表記とともに使い方の説明も多言語表記しておくと、トラブル予防にもなるでしょう。

店内の雰囲気を壊してしまうのでは、と不安な場合や言語表記では説明が困難なときは、イラストを活用した解説ボードの設置も効果的です。

免税店化

外国人観光客にショッピングを楽しんでもらうコツのひとつが、免税店化です。似たような商品を取り扱っている店舗が近隣にある場合は、差別化にもつながります。

税店化は、納税地(店舗や事業所のある地域)を管轄する税務署へ届け出ることで可能です。複数店舗を経営している場合は、「免税店化したい店舗ごと」に輸出物品販売場許可申請書(一般型用)および必要書類を提出する必要がある点に注意してください。

申請には、国税を滞納していないことや免税手続きの案内ができる人員を配置することなど、一定の条件を満たしていなければなりません。しかし厳しいものではないため、一度チャレンジすることをおすすめします。

業界別インバウンドの施策【宿泊施設】

知り合いの家に宿泊する人や別荘の所有者を除くと、大半の旅行者は宿泊施設を利用します。近年は民泊事業など新たな宿泊施設のスタイルも台頭しつつありますが、いずれの業態もインバウンド施策に大きな違いはありません。

宿泊施設で取り入れるべきインバウンド向けの施策は、以下の3つです。

部屋のマニュアルを用意

日本様式のアイテムや施設が多い宿泊施設において、使用方法が分からずトラブルやマイナス評価につながることは多々起こり得るものです。

たとえば、以下のアイテムや設備は多言語表記のマニュアルやイラストによる説明が求められます。

・温泉や大浴場の入り方
・浴衣の着方
・エアコンやテレビの使い方
・有料設備の使い方・支払い方法

国によっては水着を着用のうえ入浴する温泉が一般的のため、入浴方法や注意点の説明は欠かせません。エアコンやテレビ、有料設備(冷蔵庫の飲料やズボンプレッサーなど)の利用方法も必要に応じてイラストつきで表記しましょう。宿泊費とは別途料金が生じる設備やサービスについては、別料金であることも説明しなければなりません。

アクセスの改善

訪日外国人の多くが、インターネットで観光地の情報と同様に宿泊施設へのアクセス情報も調べています。空港や駅、観光スポットへのアクセスが良い宿泊施設は道順も分かりやすく、外国人の目に留まりやすいでしょう。

一方、道順が複雑なところやランドマークよりも遠方にある宿泊施設は、敬遠されるおそれがあります。シャトルバスの運行や送迎サービスなど、地理や日本語に詳しくない外国人観光客が安心して利用できるようなサポートを取り入れることが重要です。

バス停や駅から徒歩でアクセスできる場合も、道順が複雑な場合はホームページ情報を改善することをおすすめします。最寄りのバス停や駅からの道順を、写真とともに解説するページを作成すると、遠方から訪れる国内旅行者にも喜ばれます。

日本文化の体験

インバウンドの需要傾向が、近年は「モノ消費」から「コト消費」へ移っています。伝統文化体験や食体験など、日本にしかないものや地域独自の文化を体験できるスポットが人気です。

宿泊施設も、地域の観光地と共同で伝統文化を体験できる宿泊プランを提供してはいかがでしょうか。大々的なものが困難な場合も、たとえば館内レストランで手巻き寿司体験など、当日申し込みでも受け付けられるプランを用意することができます。

上質な体験や、「ここでしか味わえない感動」のコンテンツは、将来的なリピーター獲得にもつながります。

インバウンドの施策の事例

インバウンド施策を考えるに当たり、参考にしたいのがほかの店舗や施設で行っているインバウンド対策です。

インバウンド対策として、ほかの店舗や施設では実際にどんなことを行っているのでしょうか。

いくつかの事例をみていきましょう。

・大手携帯会社の人型ロボットの導入事例

空港国際ターミナル駅の駅係員の業務を補助するために、人型ロボットを導入した大手私鉄の事例。

外国人客の対応で空港からの改札口が混雑しがちになっているという課題を解消するために、人型ロボットを導入日本語・英語・中国語に対応した人型ロボットが、案内業務を担当することで混雑の緩和につながりました。

もうひとつ、外国人客に対する情報周知や会話による対応が十分にできていなかった、クルーズ船を運営している企業の導入事例も紹介します。

この企業は、クルーズのチケット売り場に人型ロボットを導入し、日本語・英語・中国語の3カ国語対応アプリを制作して、外国人客へのアピールに活用しました。

その結果、乗客数が前年比で150%も増加、外国人客へのサービスも向上、スタッフの業務対応の負担も軽減されるという成果が得られています。

・某インバウンド会社のモバイル決済サービスの導入事例

人気観光地に4店舗を展開している昆布専門店の導入事例について紹介します。

このお店は、モバイル決済サービスを導入する前から、観光客がクレジットカードで支払うことが多いということに気づいていました。

そこで、モバイル決済サービスの代理店が営業に来たときに、すぐに導入を決断。このサービスを導入以降、外国人観光客の半数程度がモバイル決済を選択するようになったとのことです。

・クラウド通訳の導入事例

外国人観光客との言葉の壁を解消するために、クラウド通訳を導入している企業・店舗も多くあります。

例えば、外国人観光客の増加への対策として、インフォメーションカウンターでの案内にクラウド通訳を導入した商業施設があります。

それまでは、自動翻訳アプリなどを使っていましたが、急いでいるときなどに上手く対応できないといった難しさがあったとのことです。クラウド通訳を導入してからは、「通訳さん」が通訳してくれるため、外国人観光客の難しい問い合わせなどにもスムーズに対応できるようになり、サービスの質が高まったと好評です。

外国人観光客への対応でお困りなら、クラウド通訳の導入を検討してみてはいかがでしょうか?双方の言葉の壁を、「通訳さん」が解決します!

まとめ

インバウンドの施策を成功させるためには、まずはターゲットと目的を明確にし、外国人観光客の目線で考えることが必要です。その上で、外国人観光客の不便を取り除くこと、外国人観光客が魅力に感じるような施策をやらなければなりません。


インバウンド向けにオンラインで情報発信を行うこと、多言語対応に取り組むこと、キャッシュレス決済に対応することは、インバウンドの施策の基本です。こちらでご紹介した成功事例を参考に、インバウンド対策を行ってみてください。


▼出典
1. 観光庁「訪日外国人旅行消費の増加に向けて」
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001366729.pdf

(上記掲載の内容は、掲載日時点のものです。あらかじめご了承ください。)