インバウンドの3人に1人がお買い物?アパレル業界の課題

家電や薬品、化粧品が注目されがちですが、アパレル用品も訪日外国人観光客に人気です。吸湿性や保温性に優れた機能性インナーはもちろん、ごく一般的な商品も注目されていることをご存知でしょうか。

一方で、テナントや路面店の多くは百貨店のようなインバウンド対策が進んでいないという弱点もあり、売り上げが伸び悩む一因となっています。

ここでは、訪日外国人客を取り込みたいアパレル業界の方へ、インバウンド対策に必要なポイントについてご紹介します。

インバウンドとは

インバウンド(inbound)とは「本国行きの」という意味の英語で、日本では近年、訪日外国人観光客や外国人(による日本への)旅行をさす言葉として使用されています。余談ですが、対義語として日本人の海外旅行をさすアウトバウンド(outbound)も存在します。

訪日外国人観光客の数は年々増加傾向を見せ、2013年に1000万人以上、2016年には2,403万人を記録しました。

・2013年…1,036万人
・2014年…1,341万人
・2015年…1,973万人
・2016年…2,403万人
・2017年…2,869万人
・2018年…3,119万人

参考(日本政府観光局「年別 訪日外客数,  出国日本人数の推移」)
https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/marketingdata_outbound.pdf

上記のとおり、6年間で約3倍もの増加率を見せているほどです。2020年の東京オリンピック開催や各地のテーマパーク開園など、さまざまなジャンルで海外からの日本の需要が増え続けています。

近年は訪日外国人がもたらす日本経済への効果が広く注目されており、観光業の他に百貨店などの小売業界でも軽視できない規模となりました。たとえば某大手百貨店では、中国人観光客の爆発的な増加に対応すべく、大陸で使用されているメッセンジャーアプリによるマーケティングを展開しています。

いまや街中の個人商店ですら世界的な口コミサイトに掲載され、日々外国人客で賑わうほど、日本の各業界にとってインバウンドは大きな影響を与える存在です。

アパレル業界 インバウンドからの需要

観光庁が発表した「平成29年10月-12月期 訪日外国人消費動向調査」の『費目別購入率および購入者単価』によると、訪日観光客の多くにアパレル系の需要がありました。3人に1人の割合(37.2%)で衣服・バッグ・靴などのアパレル用品を購入しており、購入単価の平均は一人当たり28,233円にまでおよびます。

■購入率 ※服(和服以外)・かばん・靴)

・韓国…21.5%
・台湾…44.8%
・香港…54.0%
・中国…44.6%
・米国…18.9%

■購入者単価※服(和服以外)・かばん・靴)

・韓国…16,528円
・台湾…19,577円
・香港…20,983円
・中国…49,357円
・米国…25,749円

主要5か国の調査結果を見ると、上記のとおり台湾、香港、中国からの観光客による需要がとくに高く、およそ2人に1人の割合6で購入していることが分かりました。

ちなみに、これらの数字は和服を除いた場合です。外国人のアパレル用品購入といえば和服など民族衣装を想像する方も多いでしょう。実際は和服の購入金額(一人当たり平均12,836円)以上の数字を示しており、多くの訪日観光客から日常使いのアパレル用品が求められています。

参考(国土交通省 観光庁「平成29年10月-12月期 訪日外国人消費動向調査」)
http://www.mlit.go.jp/common/001217545.pdf

品質の良さも好評の理由ですが、最も支持を集めている理由はデザインが良い・きれい・かわいいなど総じて見た目に対する高評価でした。アジアの近隣諸国はもちろん、多様性を重視する米国の購入金額が2番目に高い点も特徴的です。

これら訪日外国人観光客の動向を参考にすると、機能性のみならず、デザインで勝負しているアパレルブランドもインバウンド化の高い効果が期待できます。

インバウンド対策としてアパレル業界の店舗に必要なこと

アパレル業界に対する訪日外国人観光客による高い需要が判明している一方で、実際には多くの店舗でインバウンド対策が行われていないのが現状です。

海外向けの決済アプリを導入する店舗は増えましたが、決済方法以外のインバウンド対策は不十分であり、店頭スタッフの負担が大きくなっている店も少なくありません。

この項目では、具体的に各店舗など現場で求められているインバウンド対策についてご紹介します。

通訳スタッフの配置

訪日外国人観光客が多く利用する店舗を中心に、通訳スタッフの配置が必要です。中には最低限の日本語を理解している外国人利用者や、身振り手振りでやり取りできる場合もありますが、こまかなコミュニケーションには通訳が必要です。

・試着ができること
・色違い・サイズ違いがあること
・免税への対応についての説明

たとえば、これらの説明は言葉にしなければ伝わりにくいのではないでしょうか。他にも店舗限定品やコラボ商品など、厳密な発売日や取扱数量が決まっているアイテムの場合、売り切れや再入荷・取り扱いがないことを伝える必要もあります。

トラブルなく、気持ちよくショッピングを楽しんでもらうためには、スムーズなコミュニケーションをとれる通訳スタッフの存在が欠かせません

また、近年は英語だけでなく、第二外国語を話すことのできる販売スタッフが必要です。とくに訪日数の多い近隣諸国の顧客に対応できるよう、中国語や韓国語に強いスタッフは優先的に採用すべきでしょう。

コストが気になるときは、専用の通訳サービスを活用する手もおすすめです。たとえば『クラウド通訳』であれば、テレビ電話を通して専用通訳スタッフがリアルタイムで通訳してくれます。

中国語や韓国語、タイ語、ポルトガル語など英語以外の言語にも対応できるうえ、機械による翻訳のように不自然な変換に悩まされることもありません。

免税への対応

安く良いものを多く買いたいと思うのは、訪日外国人観光客も同様です。彼らが購入しやすいよう、消費税を免除するサービス『免税対応』は軽視すべきではありません

免税は店や企業の決定のみで即日始められるものではなく、免税店となるための手続きが必要です。管轄地域の税務署にて「輸出物品販売場許可申請書」を提出し、認可を受けましょう

注意点は、店舗ごとに手続きが必要となることです。チェーン店の場合は店舗ごとにそれぞれの管轄税務署にて手続きを行い、新店オープン時も同様です。

免税店となった後も、免税関連の手続きについて従業員に対する研修を行わなくてはなりません。

輸出物品販売場(免税店)として認められるための審査内容には、「免税手続きに必要な人員と設備が整っている」ことが含まれています。審査に通過してから状況を見て求人を出そうという考えは通用しないため、インバウンド対策として免税店化を視野に入れるのであれば早期の人員配置や設備導入が必要です。

また、審査によっては実際の店舗見取り図や、免税手続きの教育や案内に使用するマニュアルなど具体的な資料が求められることもあります。

Wi-Fiの設置

ブランドサイトの情報を参考にするなど、国内外問わず顧客が店頭でモバイル通信を利用することがあります。滞在時間を延ばすためにも、いつでもスムーズに通信できる環境を用意しましょう。

旅行者向けのSIMカードを利用する方もいますが、Wi-Fiの設置をおすすめします。ただし、プロバイダ責任制限法に基づくさまざまな義務が発生するため、認証なしで使用できるフリーWi-Fiではなく、ある程度の認証動作が求められる状態にしましょう。

店舗での設置が難しい場合や、テナントとしてショッピングモールなどに入っている場合は、近隣のWi-Fiスポットを案内する程度でも十分です。

いずれにせよ、「Wi-Fiが利用できる」もしくは「近隣にWi-Fi利用できるスポットがある」ことを案内できるよう、従業員教育が求められます

まとめ

インバウンド対策は一部の観光業界や大手百貨店のみに求められるものではありません。近年はアパレル用品に対する需要が高く、企業のみならず店舗単位でのインバウンド対策が重要です。

海外クレジットカードや決済アプリへの対応はもちろん、言語に関しても需要に応じたインバウンド対策を行いましょう。とくにアパレル業界はこまやかなサービスや意思疎通が購買意欲を左右するため、言語面への対応力を充実させたいところです。

第二外国語に強い販売員の導入が需要に追い付かない場合は、クラウド通訳など外的サービスの活用を検討してはいかがでしょうか。

(上記掲載の内容は、掲載日時点のものです。あらかじめご了承ください。)